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About SHINGO HORIE

三重県奥伊勢出身。10代でスキューバーダイビングにハマり、ダイビングインストラクターになるため、尾道で海技学院に入学。卒業後、ダイビングインストラクターとして就職。山口県、鹿児島トカラ列島、沖縄本島を転々と仕事をする。その後、ダイビングの能力を活かしつつ人助けるため、海上保安庁に入庁。入庁後、潜水士、特殊救難隊として救助活動に専従しつつ、休暇では海外一人旅を続ける。3.11発生後、組織ではなく自分自身の力で人の役に立ちたいと考えていたところ、ドイツ旅で出会った知人がドイツ移住を勧める。悩んだ末、2014年1月渡独。現在、ドイツ語を勉強しつつ、自分探し中。

ドイツからの手紙 VOL.18 〜北欧のポストから 8通目〜

終わりへ 旅の終盤になると、風は強いけれど晴天が続き、スウェーデン7番目の高さを誇るアッカ山が常に見える様になった。それまでは晴れたり曇ったりの繰り返しだったので、すっきり晴れた青空の下は歩いていても気分がいい。 なかなか近づかないアッカ山を見ながら、あの山の麓に着いてしまえば旅が終わる。と、旅の終わりを意識しだした。長い旅の最初の数日間は体が歩く事に慣れていない、だけど3日目を越えると歩ける体になってくる。一週間を越えると体の痛みもあるし、減ってきた食事の心配もある。だけど旅が日常に変わって、ゴールするのが勿体なくなるなる。これは長距離を歩いた人はきっと感じていると思う。 ダイエット? 今回の旅では余裕を見て2週間分の食事を持ち歩いていた。朝と昼は軽くて栄養が取れるグラノーラなどをカップ一杯ずつ。夜はパスタや袋ラーメンだった。足りないカロリーと引き換えに、お腹周りの肉がどんどん落ちて行った。 サーレクへ 旅を終える前にサーレク国立公園に入る事にした。いままで歩いていたパドィエランタラーデンは、このサーレクの周りを歩くルートだ。「ニルスの不思議な旅」にもこのサーレクの事が少しだけ書かれている。実はスウェーデンの20クローネ紙幣には「ニルス」が印刷されている。 サーレクと今まで歩いたルートとの違いは「道が無い」ことだ。もちろんヒュッテも無く、サポートを受ける事は出来ない。だから立ち入る人は少なく、本当の自然が広がっている。 実際、足を踏み入れると、トナカイの足跡かヒトの足跡か分からない筋が無数に広がっていた。いままで雪山以外で踏み跡の無い自然の中を歩いた事はなかったけれど、目の前に広がる広大な草原を見つめていると「まあ、気張らずにおいでよ」と自然が語りかけてくれる様な気持ちになった。 自由だと思っていたこれまでのトレイルも、結局は出来上がった道を歩いていた。自分の歩きたいルートを、自分の行きたい所まで歩く。これが現代ではめったに出来ない本当の旅なのかもしれない。 [...]

2016-01-09T22:10:30+09:002015. 11. 12|

ドイツからの手紙 VOL.16 〜北欧のポストから 6通目〜

サーメ人の村 行程の半分の地点、湖のほとりにスタロールオクタ(Sutaloruokuta)と呼ばれる村がある。トレイル上には何カ所かサーメ人の小さな村があり、この村が一番大きい村だ。と行っても20戸も家はないけれど。 立ち話をしたオランダ人は「この村はとても貧しい村だ」と言っていたけれど、そう思えなかった。何軒かの家では小さな子供が楽しそうに庭先であそんでいたし、漁に出かける大人も朗らかで自信にあふれていた。確かに見た目は貧しいかもしれないけれど、数百年前から受け継がれてきた暮らしの中に心の豊かさを感じた。なによりこの村から見える景色は「こんなに素晴らしい景色を神が与えたまうとは:God willing and weater permitting」と称されるのだから。 サーメ人の教会 村内にはサーメ人の伝統的な家と木造の家が隣り合わせて立っていた。伝統的な家は木組みの土台に苔をはりつけて風を通さない様にしている。なんだか可愛い作りだけれど、木々の少ない土地で家を造る先人の知恵だろう。その伝統の作り方で村の中心には教会が建てられていた。中に入ってみると椅子のかわりにトナカイの毛皮が敷き詰められ、ステンドグラスを抜けた光が柔らかく射し込んでいた。冬には雪に閉ざされる小さな村、そこに建つ教会にさまざまな思いが浮んだ。

2016-01-09T22:11:51+09:002015. 10. 22|

ドイツからの手紙 VOL.15 〜北欧のポストから 5通目〜

水源より 氷河や残雪から流れ出す細い水筋はトレイル上で喉を潤わすせせらぎになっていたり、時には集まり、渡るのが困難な川になっている。そんな時はできるだけ飛び石の要領で川を渡るのだけれど、中にはどうしても靴を脱いで徒渉しなければならない場所もある。そんな所では、うっかり転んで荷物が濡れない様に慎重に渡るのだけれど、雪解け水は恐ろしく冷たく「つめてえーー」を連呼する事になった。渡り終えた後、しばらく放心状態になるほど冷たい水に触れたのは初めてだ。 川の水は次第に大きな流れに変わり、海の様に大きいVrihaure湖に流れ込んでいく。ハイランドからは源流が湖に辿り着くまでの道を歩くが、ただ下り道だけではなく何度も大きな丘を越えた。ある丘の上で視界に飛び込んできた湖は息をのむ程に美しく光り、夜10時すぎの日没時テントから湖を眺めると、ノルウェーの雪を被った山々が雲間から照らす夕日に輝いていた。光の雨の様な風景にしばし見とれてしまった。

2016-01-09T22:12:27+09:002015. 10. 15|

ドイツからの手紙 VOL.14 〜北欧のポストから 4通目〜

ハイランドへ 「歩いてモスキートワールドを超えてきたの?ようこそハイランドへ!」にこやかにヒュッテの管理人が話しかけてきた。このトレイル上には約10~20キロおきにヒュッテが建てられていて、テントの無い旅人はこの小屋に泊まる事が出来る。どうやら3日目のヒュッテまでの宿泊費とフライト料金が同じなので、蚊を嫌う旅人はヘリで湿地帯を超えてくるようだ。着陸したヘリを指差しながら管理人が教えてくれた。たしかにヘリでくれば良かったかも。と思える程に顔や両肩はボコボコになっていた。晴れていても暑くてもレインジャケットを脱ぐと瞬く間に蚊に襲われる。さすがはモスキートワールド。 ハイランドに入ると蚊の姿は急に減り、景色ががらっと変わった。標高が上がった事で苔や低木が広がり、木立はほとんど見えなくなる。氷河の残した池がいたるところにあり、周囲を見回すと残雪、遠くの山々のあいだには氷河が望める。風を遮る場所を見つけテントを張って氷河を見つめていると、巨大な自然の中で自分やテントの小ささをヒシヒシと感じた。 テント旅の自由 テントを持って歩くという事は、重さとザック内のスペースと引き換えに自由を持って歩く事だと思っている。ヒュッテを使ってこのトレイルを旅する人達は、途中で雨が降ったらレインウエアを着込んで歩き、美しい風景でも足を止めるだけになる。 その点、テントを張る場所を定められていないこのトレイル内では、雨が近づいてくればテントを張って逃げ込む事もできるし、美しい風景があればその場で一晩を過ごす事だって出来る。トナカイの糞は至る所におちているけれど、それを気にしなければフカフカの苔のマットの上で寝転ぶ事も出来る。時々、強風に煽られたり、動物の気配にビクついて眠れない事もあるけれど、そのぶん自然に触れ、自由を味わう事ができる。日本でも山にはテントを担いで行くけれど、その何倍も自由だ。

2016-01-09T22:13:26+09:002015. 10. 04|

ドイツからの手紙 VOL.13 〜北欧のポストから 3通目〜

出発地点へ 山々は雲に隠れてみえないが、本来ならば雪を冠した山がみえるはずだ。小雨に車体を濡らしたバスがクビィックヨックに到着した時には乗客は2人になっていた。雨の日は外にいてもしょうがないので、バスを降りて早々にテントを張って地図を覗き込み、明日からの計画や食料を再度確認する。登山や歩き旅を初める前日は、どうしても興奮と不安が混じり合ってなかなか寝付けない。それが旅の楽しみの一つでもあるのだけれど。 パドィエランタレーデンの始まり 翌朝は小型ボートでの移動から始まった。雪解けの川の水は澄んでいて底まで覗き見る事が出来る。船長の計らいで入り組んだ水路を案内してもらい、小一時間の船旅の後、桟橋には見えないボート乗り場に「Good Luck!」との船長の一言と共に降ろされた。出発前に計った荷物の重さは軽く30キロオーバー。さあ、パドィエランタレーデンの旅の始まりだ。 蚊の襲来に驚く それにしても蚊が多い。ボートを降りるとすぐさま蚊の大群に襲われた。ラップランドの旅を紹介するどの本やネット記事にも「虫除けスプレー、ネット、帽子は絶対に忘れるな!」と書かれているはずだ。慌ててネットを被ったころには既に頭が凸凹になっていた。頭まで咬まれないだろうとタカをくくって虫除けスプレーしていなかったけれど、さすがトナカイを襲うヤツ等。髪の毛なんて気にしない様だ。 ハードな道並み? 出発からしばらくは森の中の湿地や樹林帯をを行く。濡れた木の渡し板は滑り、地面から突き出た石で歩きにくい。反対方向から来た旅人は涼しい顔をして「ここから3日目までがハードだ」とエール(?)を送ってくれた。蚊は多く、歩きにくい道だけど木々の合間から見える青空を楽しみながら、先の事を考えずに歩いていると、所々に「Food Rager」と書かれた木々を見つけた。この意味は「夜、眠る時はテントに食料を入れず、木の上に上げておく事。」付近に熊が棲息している証拠だ。人を襲う事はめったにないと事前に聞いていたが、やっぱり熊は恐いので、早足で通り過ぎた。 [...]

2016-01-09T22:13:42+09:002015. 09. 24|

ドイツからの手紙 VOL.12 〜北欧のポストから 2通目〜

旅立ち 旅は大雨の中、ドイツ2番目大きさの港町ハンブルクまでのバス移動からはじまった。初日にしてデニムはびしょ濡れ。到着後、小雨になった街を一晩の宿を提供してくれた友人と歩くと、ビートルズの四人が暮らしていた家や初めてのライブハウスを案内してくれた。ここはビートルズが生まれた街でもある。 夜の街 ミュンヘンは夜8時以降は店も閉まり静かになっていく。それに対して港町の夜は長い。ハンブルクのネオンは夜遅くまで輝いていた。 まったく目覚めない友人に書き置きを残し、ハンブルク中央駅から北に向かう列車に乗り込む。スウェーデンまでの直行便はなく、まずは人魚姫で有名なデンマークのコペンハーゲンに向かい、そこで乗り換える事になる。 驚きの旅路 流れる景色を眺めながらウトウトとしていると、いつの間にか建物の中に列車が止まっていた。乗客は全員下車する様に指示され、列車から降りると建物全体がゆっくり揺れ出した。 懐かしい揺れに建物の階段を上がって行くと、思った通り船の甲板に出た。列車ごとフェリーに積み込まれた様だ。ドイツからデンマークまでは橋か地下トンネルで向かうのだろうと思っていたので、嬉しい驚きだった。列車をフェリー輸送するところなんて、世界でもそんなにないだろう。1時間弱の船旅は久しぶりの海風を感じさせてくれた。港に入るとそこはもうデンマーク。デニムが経験する初の北欧だ。 さらに北へ ストックホルムへの到着は夜9時。ハンブルクから半日かかった事になる。更に目的地のクビィックヨックまでは、夜11時発の夜行列車とバスを乗り継いで、翌日の夕方5時到着予定だ。ホームには北を目指す旅人があつまっていた。 [...]

2016-01-09T22:13:51+09:002015. 09. 15|

ドイツからの手紙 VOL.11 〜北欧のポストから 1通目〜

夏の間、3週間ほどスウェーデンを旅して回っていました。スウェーデンというと綺麗な街の雰囲気を想像するかもしれませんが、北部に行くと美しい大自然が待ち構えています。ちょっと雰囲気を変えて、デニムとの北欧旅を記したいと思います。 […]

2016-01-09T22:14:17+09:002015. 09. 06|

ドイツからの手紙 VOL.10

ドイツは真夏 ドイツは日本より1ヶ月くらい夏を先取りする。なので7月は夏真っ盛りだ。 気温も40度近くまで上がるが、湿気が少なく広大な大地が日光を吸収してくれるのか、木陰に入ると過ごしやすい。太陽の輝く日には川や湖の側で、たくさんの人が涼を求め集まっている。一方で山に入って涼を求める人も多い。 ドイツの山へ 先日、連休が取れたのでミュンヘンから電車で1時間程の山に登ってヒュッテに一泊してきた。ミュンヘンはドイツでも南方でアルプスの近くに位置している。大都市から1時間でも充実した登山が出来る山がたくさんある。 さらに、ドイツ人は登山やハイキングが好きな国民性だからか国の山岳協会の管理が行き届いていて、道がしっかり整備されていたり、山小屋の価格がとても安く(山岳協会の会員だと10€程度で山小屋に泊まることが出来る)気軽に山に入る事が出来る。 山のデニム 日本よりも標高が低い山が多いからか軽装で登山に行く人も多く、5月下旬に登りに行った時はデニムを履いた年配の登山客が多くてビックリした。日本だったら「山をなめるな!」と怒られそうな服装だけれど、場所が変わるとまったく登山スタイルが違うのが印象的だった。 山小屋のスタッフも街なかと同じ様にデニムを履いて働いていたのにはビックリしたが、これがヨーロッパでは普通みたいだ。 日本に比べると太陽の光が強くて乾燥しているのがドイツの夏山の特徴だ。日本の速乾吸収性に優れた服装はドイツにはあまり適さない様で、風を通す襟付きのシャツが主流の様だ。サングラスと日焼け止めを忘れると日差しで痛い目をみることは去年学んだ。 [...]

2018-12-03T15:03:00+09:002015. 07. 04|

ドイツからの手紙 VOL.9 

ミュンヘンの中心街を歩いていると、足下に「Flohmarkt」と、書かれているのを見つけた。どうやら近くでフリーマーケットが開催されているようだ。矢印に従って歩いていくと高級住宅街の歩道に人が溢れ、色とりどり様々な品物が並んでいる一角に辿り着いた。 […]

2018-12-03T15:05:47+09:002015. 06. 18|

旅するデニム 〜ドイツからの手紙 vol.8〜 

ドイツの新緑 朝、森の中を散歩すると若々しい緑の葉が5月の光を楽しんでいる。木漏れ日の中、新緑の中を散歩するのが夏に向かうの5月の楽しみだ。庭にも色とりどりの花が咲いている。 […]

2018-12-03T15:11:00+09:002015. 05. 20|

旅するデニム 〜ドイツからの手紙 vol.7 〜 

ドイツからプラハへ ミュンヘンから簡単に訪ねる事が出来る街のなかでも、チェコのプラハが好きだ。プラハは戦争の影響をほとんど受けておらず、迷路の様な古い町並が残っている。気がついたらドイツに移住して1年の中で、3回も通っていた。今回はそんな愛しの街へ、初めてデニムと旅をした。 […]

2018-12-03T15:11:34+09:002015. 05. 05|
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