4月からスタートした文化服装学院×尾道デニムプロジェクト。

開始から早半年、6月に予定していた研修旅行ですが、緊急事態宣言などで延期となり、11月にやっとの想いで行うことが出来ました。

今回の研修旅行のテーマはデニムの産地を巡るツアー。
実際に生徒さんにも穿き込んでいただいている、尾道デニムが出来るまでを巡っていただきました。

【1日目】福山
1日目は2チームに分かれ、広島県福山市の生地工場・縫製工場・洗い加工場へ。何故福山にはデニムなどの繊維産業が盛んになったのか?
約400年前。備後地区は土の塩分濃度が強く、作物が育ちにくかったことから福山城の初代城主である水野勝成が塩分に強い”綿花”の栽培を奨励。農家の人たちは閑散期には機織りをして生計を立て、繊維産業が発展していったと言われています。

デニム生地の生産よりも前に行われていたのが備後絣。日本三大絣として知られている”備後絣”は、江戸時代後期に福山市北部芦田町の冨田久三郎が作り方を研究し、地域の人たちに広めていったそうです。
備後絣を作るためには工程がたくさんあり、分業体制になったことから地域に発展していきました。それは現在でも受け継がれており、染めは染め、織は織など分業体制で行っている工場が多いのも特徴の一つです。

そんな福山の尾道デニムとも関りの深い 3つの企業にお邪魔しました。

株式会社 四川/洗い加工場
四川さんでは、製品の洗いや加工や製品染め・生地染め・マーブル染め等、製品の状態になったものの加工・仕上げを行っています。  そんな四川さんは、尾道の方に穿き込んでいただいている尾道デニム(USEDデニム)を毎週回収し、洗濯と乾燥を行っている工場でもあります。ここでしっかり1週間の汚れを落としていただいています。かっこいいデニムを育てるためには欠かせない工程です。

生地を削る工程。生地の下に凹凸のある「ヒゲ馬」と呼ばれる台を挟み生地を削ることで濃淡が現れ、立体感が出ます。これも全部1本1本職人さんの手作業。

ワンウォッシュやバイオストーン、ストーンウォッシュなどの洗い加工。軽石やテニスボールなどと一緒に洗ったりすることで風合いが生まれます。

尾道デニムでも使われている乾燥機

その他にもベルトループを使った商品や藍のお茶やうどんなどおもしろい商品開発をされています。

右から今回ご案内してくださった㈱四川の藤井さんと花田先生。いい笑顔です。

■大江被服/縫製工場

備後地方の繊維産地は長く分業制をとっており、「製織」「裁断」「縫製」「後加工」「検品」など工程一つ一つで大小さまざまな会社があります。


そんな中、大江被服さんは「パターン」⇒「サンプル」⇒「裁断」⇒「縫製」⇒「仕上げ」⇒「検品」⇒「出荷」までを一貫体制してできる工場です。
主にデニム素材や布帛(ふはく)全般素材でボトムス(パンツ・スカート)とカジュアルブルゾンを生産されています。
ヨーロッパを代表するアパレルブランドから一貫生産を請け負う同社の、生産管理や製品への想いについてご説明頂きました。

大江被服㈱ 代表 大江 淳子さん。息子さんである大江俊介さんは文化服装学院IMD科のご出身。

工場内は残念ながらお見せすることが出来ませんが、大きな工場の中にはたくさんのミシンとそれぞれ裁断をする人、パーツごとに縫製を担当する人、検品をする人、一つの商品を作るのにこれだけのパーツがあって、これだけの人が関わっているのか、、ということを実感させられます。

そんな中でも生徒さんたちが興奮していたのは「裁断」。何十枚も重なった分厚い生地をカーブや曲線をずらすことなく、手作業で一気に裁断していく様子は感動の職人技でした。

また、PJ001のパターンや縫製の際の指示書なども見せていただきました。パターンでは生地をなるべく余らせないようにパーツを配置するのも大切な仕事。


従業員の方の中には文化服装学院の卒業生の方もいらっしゃいました。明るくパワーのある大江さんにとっても楽しい会でした。

篠原テキスタイル 株式会社/織物製造販売

元々は備後絣からスタートし、なんと創業100年以上。デニムをメインに製造。織物工場はたくさんある中で、綿だけでなく紙の糸やテンセルなど様々な素材を使った特徴のあるデニムも作られています。またONOMICHI DENIM SHOPでも大人気のデニムソックスの制作や藍の栽培、オンライン工場見学など、様々な角度から産地の発信活動を精力的に行われています!まずはショールームにお邪魔し、デニムがどのように織られているのか、タテ糸とヨコ糸の組み合わせで大きく変化する素材の特徴や風合いについて教えて頂きました。

ショールームには様々なデニム生地がたくさん。デニムと一言に言っても糸の素材や折り方で全く違う風合いになります。

ご案内してくださったのは 篠原テキスタイル㈱ 篠原さん

生徒さん自身がしているブランドの素材に篠原さんのデニムを使いたいというお話も。嬉しい出会い。服作りで素材を選ぶうえで、その素材がどのように作られているのか、知るのと知らないのでは全然違います。

続いて工場を見学。24時間稼働し続ける織機。

目では追えないスピードで緯糸が経糸へどんどん織り上げられていきます。どのような仕組みで機械が動いていくのか丁寧にご説明していただきました。

そして、ちょうど来られていた藍屋テロワールさんにもお会いすることが出来ました。藍の栽培から染めまでを行っていらっしゃいます。藍で染まった真っ青な手にみんな驚き!働くひとの手、かっこいいです。

 

【2日目】尾道
2日目はONOMICHI DENIM SHOPからスタート。やっとみなさんに実際に尾道デニムを見ていただくことが出来ました!

そして尾道の町を散策。ロープウェイに乗ったり尾道ラーメンを食べたりそれぞれ楽しんでくださったようです。

尾道は初めてという生徒さんがほとんどでした。尾道の町でどのような人たちが暮らしていて、働いているのか。その町の中でどのようにデニムが育っていくのか。少しでも感じていただけていたら嬉しいなぁと思います。

REKROW作品撮影

午後は、4月から一緒にスタートしたREKROWの素材を使った作品撮り。7チームに分かれそれぞれコンセプトメイキングから制作まで行ってくださいました。それぞれのチームのコンセプトについては是非こちらをご覧ください。

カメラマンには的野 翔太さんにお越しいただき、チームで撮影場所を選んで撮影開始。

みんなの制作した服やバッグも素敵だし、モデル姿もかっこよすぎて、見てるだけでワクワクする作品になりました。さすがでした。スタイリングの中にPJ001を着用してくださっているものも…!天気も良く、日差しや夕暮れ、釣りをする近所のおじいちゃんまでも作品とうまくマッチしていました!とにかく楽しかった~!!
いい写真がありすぎて選びきれておらず、悔しいです。。その他の写真はぜひREKROWのInstagramをご覧ください!

バッグ科 ONOMICHI DENIM SHOP視察
そして、この日は別のコースで研修旅行を行っていたバッグ科のみなさんもお店へ足を運んでくださいました。デニムについて色々質問をしてくれたり、嬉しかったです。みんな素敵な方たちばかり。。

【3日目】福山 鞆
「鞆さんぽ」の案内人はNIPPONIA 鞆 港町の客野さん、檀上さん、通堂さん。鞆で生まれ、鞆で育った3名から、自らが暮らしの中で見て来たことを伝えることで、鞆を好きになってもらいたいと思いました。

あっという間の研修旅行も鞆散策にて終了です。生徒の皆さんは楽しんでいただけていたでしょうか…?


研修旅行への想い

ファッション業界は生産をしてくれる人、企画をしてくれる人、納品してくれる人、販売してくれる人が分業となり、たくさんの人の手が加わり完成していきます。
これらのバックボーンを一貫して知ることの大切さ。
繊維産地の人たち、尾道や福山の町の人たち、「人」が見えることで、ものに対する見え方も変わってくるはず。今回の研修旅行を通して、それを知っていただく機会になればいいなと思いました。

そしてなにより「デニム」の楽しさを知り、好きになっていただけたらと!

デニムの楽しいところは穿き始めてから自分で育てていく楽しみがあるところだと思います。尾道デニムは産地の方々の技術力に加え、尾道の人々の過ごした時間がデザインとなって完成します。文化服装学院の花田先生のお言葉をいただくと「穿いた人がデザイナーとなって育てていくプロジェクト」です。

IMD科とバッグ科の生徒さんたちの制作過程を見ていて、本当にすごい!ものづくりの人たちって何てかっこいいんだろう!と何度も感じていました。この「穿いた人がデザイナー」という言葉を聞いて、自分もものづくりに関われている気がして嬉しかったです!

誰でもデザイナーになれて、誰でも楽しめるデニムってやっぱり素敵♡
今回のお取り組みを通して私たち自身も、ものづくりに対する想い、デニムに対する愛がより大きくなりました。

4月の授業から始まり、6月はトークイベント、8月は246 st Market、11月の研修旅行、とたくさんの刺激と楽しい思い出をいただきました!これから卒業となる生徒さんたちは、社会に出てどんな日々を過ごしてそれがデニムに刻まれていくのか、楽しみです。

そしてまた尾道に足を運んでくれることを楽しみにしております!皆さんのご活躍をお祈りしております。ありがとうございました!