尾道の人が履いたデニムをさらに職人たちに受け継ぎ、デニムと共に思いが受け継ががれていき、新たな地域の人の人生を刻み込む旅するデニム。海を渡ってドイツ、そして国内の様々な場所で暮らす人を頼りに冒険がはじまっている。4月末、尾道を出発したデニムは、京都の職人さんのもとへ辿り着いた。

今回は、7名の職人さんにお会いし、2代目オーナーとしてバトンタッチしてまいりました。

林 宗一郎さん
能楽師:林 宗一郎さんは、能楽を京都から世界へ発信するべく活動を展開している方。デニムを履いてお稽古をしてくださるとのこと。渋いです。

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ガイセ・キキさん
裏千家みどり会でお茶を学んだというチリ人のキキさん。スタイル抜群で透明感があり、尾道デニムに女性らしさが加わりました。日本人の私より日本文化を知っているかも…お仕事では、お茶の文化を継承する活動をしていらっしゃいます。陶々舎という、大徳寺の西側に位置する昭和初期に建てられた家にお茶数寄な2人と暮らしていらっしゃいます。

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山口 淳一さん
2014年バリスタ世界チャンピオンである山口さんは、飲食店の経験がない状態で珈琲の世界へ飛び込んだそう。バリスタという職業の由来や、世界大会の種類、また1つの芸術を3分でつくりあげるコツを教えていただきました。現在は、 % Arabica Kyotoで店長を勤めていらっしゃいます。美味しかった〜。

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ヤマシタ リョウさん
竹と鉄から眼鏡をつくる現代アーティストであり眼鏡作家のヤマシタリョウさんは、白衣を着た眼鏡のお医者さんの様な佇まい。造形的に美しいものや、自由度の高さの中の機能性を追求しながら、オーダーメイドで眼鏡を作っていらっしゃいます。工房はまるで実験室のようでした。今はまだ手が届かないお値段でしたが、一生に1本は欲しくなる素敵な眼鏡です。

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清水 志郎さん
清水焼の陶芸家である清水志郎さん。使えそうな土を各地で探し、焼き物に使えるかを実際に試しながら作品をつくるという、まさに「伝統と革新」を体現されている方。「なぜ陶芸家を続けているか」という問いに対して、「焼物が何かを自分が知るために、追求し続けている」と一言。作家として、人として、その生き様には頭が下がる思いでした。かっこいいお方です。

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廣瀬 康二さん
庖丁コーディネータ・庖丁調整士という肩書きを持つ廣瀬さんの名刺で初めて見た「庖丁」という漢字。聞くところによると、「包丁」は道具、「庖丁」は料理をする人という使い分けだそうです。「包丁1つで料理が変わる」と仰っていた廣瀬さんから、最近では日本料理以外の料理でも和包丁を使う料理人が増えているそうです。あらゆるカテゴリーで、日本のものづくりは世界の評価が非常に高いことが頷けますね。色々なお話を伺いながら、実際に包丁を調整する様子を見せてくださいました。mm単位で調整していく技は、古いものに新しい命が吹き込まれていくようでした。

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山本 晃久さん
魔鏡を作れるただ一人の鏡師という山本さんは、日本唯一の鏡師。「魔鏡」は、 見た感じだとただの鏡ですが、それに光をあてて壁にうつしてみると、模様や絵が見えるというもの。日本では、隠れキリシタンの間で隠れ切支丹鏡が作られ、禁止されたキリスト教の十字架やマリアなどを隠したまま浮かび上がらせ、それを崇拝してきたそうです。サンプルを持ち、実際に光をあててみるとキリストの絵が浮かびあがってきました。表面はフラットな鏡面なのに…不思議でなりません。山本さんは、日本独自の工芸技術であるという魔鏡を、未来へと伝える活動にも精力的だそうです。

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道具が職人を育てる
この方々はCOS KYOTOの北林さんが繋いでくださった職人さんです。京都が誇る伝統を守りながら、さらに後世へ繋いでいくために革新を起こしている方々が集まってくださいました。

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職人さんが仰っていたことで印象的だった言葉は、
・人もモノも、勝手な時だけ想いを寄せていたのでは、相手は応えてくれないということ
・道具は自分の仕事を支えてくれるものであること
・価値あるものは、一朝一夕ではできないこと
・物だけを売っているわけではなく、価値を売るということ
・日本人ならではの精神性について
・文化を若い人に伝える使命について
・テクニックだけでは価値は作れず、生き様がしっかりしていないと伝わらないということ

あらゆるジャンルで、ものづくりや表現することに込める気持ちの積み重ねや熱量が、一言一言の重みに変わっているのだと思います。ノートいっぱいに書き連ねた職人さんへのインタビューメモを読み返すだけで、背筋がシャンッと伸びる感覚です。尾道デニムを創りあげる上で込める想いや信念を考えるきっかけにもなりました。

雨の日も、風の日も、尾道で1年間頑張ったデニムたちへのご褒美の旅でもあるこの企画。世界にはどんな方がいて、どんな仕事があるのか・・・まだまだ知らないことだらけの上で、自身が経験できることは数知れていますが、職人さん→職人さんの手を渡り、新しい皺が刻まれる面白さと同時に、デニムが1つのメディアとなり、各地の歴史や文化、暮らしや仕事について伝えていける物にしていきたいですね。

そして、一生出会うことがなかった物や人との出会いのきっかけが、尾道デニムであったらいいな・・・と思っています。京都の職人さん訪問は、非常に勉強になり、まだまだこのプロジェクトが出来ることの可能性も感じるじかんでした。京都の職人さん1人1人については、また後日詳しくご紹介させていただきます。